難病のある人のなかには、仕事に就けなかったり、さまざまな問題を抱えている人もいる一方で、治療経過によっては体調も安定し、仕事に復帰されている人も少なくありません。
これから就職を考える学生の方なども、社会とのつながりを持つために「働きたい」という就労意欲の高い人も少なくないと思います。
- どのような就業条件や環境があれば自分は働けるのか
- 実際に仕事をしはじめたら、いかに継続していくことができるか
- 困ったときの支援者の必要性など
ご自身の状況にあわせて考えていけば、必ず解決の糸口は見つかると思います。
今回スタートするこの連載では、「難病のある人が長く働くために」をテーマに、毎回ゲストに登場していただき、その人のキャリアストーリーを通じて、難病のある人が長く働くためのコツなどを探っていきたいと思います(不定期連載)。
第1回目のゲストは、Wordpressエンジニアのイナフクさん(@Inafuku_Kazuya)です。それでは、どうぞお楽しみください。
目次
- 1 【新連載】「難病のある人が長く働くために必要なもの」
- 2 難病のある人は、在宅でも働けるように専門スキルを身につけよう!
- 2.1 イナフクさんの最初の就職活動はどのようなものでしたか?
- 2.2 6年勤めたパッケージソフトメーカー会社を辞めた理由は?
- 2.3 その後、WordPressエンジニアになったきっかけは?
- 2.4 WordPressエンジニアとしての経験をどのように積んでいきましたか?
- 2.5 フリーランスになることを決意した理由やきっかけは?
- 2.6 独立することに対して不安はありませんでしたか?
- 2.7 どのようにして気持ちを切り替えましたか?
- 2.8 在宅フリーランスで苦労していることはありますか?
- 2.9 イナフクさんのように在宅で働きたいと思う人も少なくないと思いますが、難病や障がいのある人の就労についてどのように思われますか?
- 2.10 難病のある人はどんなスキルを身につければ「強み」になると思いますか?
- 2.11 具体的に、どんな「作品」をつくったらよいでしょうか?
- 2.12 プログラミングを勉強したいとなったらどうすればよい?
- 2.13 在宅エンジニアやフリーランスになりたい人へのアドバイスをお願いします。
- 2.14 そのほか、難病のため在宅ワークをしたいと思っている人に何か伝えたいことはありますか?
- 2.15 最後に、イナフクさんの今後の野望や夢をお聞かせください。
- 2.16 イナフクさんの一日のスケジュール
- 2.17 編集よりひとこと
【新連載】「難病のある人が長く働くために必要なもの」
Vol.1
イナフクカズヤさん 30代 WordPressエンジニア
フリーランス《プロフィール》
1984円年生まれ。2006年大学卒業後、家電量販店向けパッケージソフトメーカーの株式会社デネットに入社。6年半勤めた後、WordPressブログ構築ワークショップの企画・開催ほか、家電量販店で光通信の販売、EC代行会社での派遣勤務などを経て、2014年フリーランスとして独立。現在は在宅WordPressエンジニアとして、システム開発やサービス保守を行う。4歳の頃に、重症筋無力症を発症。そのほか、ウィルス性髄膜炎、バセドウ病、くも膜のう胞での手術、会社を退職後は無気力状態が続き様々なトラブルが発生。会社を辞めてから3年ほど経った2016年頃より2年ほどカウンセリングを受診、白内障など(2017年に白内障を除きすべて完治・寛解)の病歴を持つ。
大学時代から、難病者にはロールモデルが圧倒的に足りない。だから俺がなってやる!という目標を掲げ、ブログ「難病者の希望の星になる男」を運営。現在も、「専門スキルを身につけて在宅で稼ぐ!というロールモデルを増やすことが難病者にとってベスト」などSNSでも積極的に発信中です。
趣味:武術 座右の銘:「やられる前にやれ」
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難病のある人は、在宅でも働けるように専門スキルを身につけよう!
イナフクさんの最初の就職活動はどのようなものでしたか?
病気がなかったら採用されたのかどうかは別として、そのときはなかなか精神的に厳しかったです。私が雇われない人生を目指すようになったのは、実はこのタイミングで、在宅や入院中の病室でもできるような環境を目指そうと思いました。
6年勤めたパッケージソフトメーカー会社を辞めた理由は?
また、移り変わりが激しい業界なので、WEBアプリやスマホアプリなどの新勢力が台頭してきたなかで、もうパッケージソフトの時代は終わりつつあると感じていました。
市場が衰退していると、企画のポジションは辛くて仕方がなく、周りからのプレッシャーで精神的にもだいぶ落ち込み、体にも支障をきたしていました。
もう、パッケージソフトで必要なソフトは出し尽くしたと感じてもいたので会社を辞めることを決意しました。
その後、WordPressエンジニアになったきっかけは?
当時、勤務していた会社でもキャンペーンサイトはWordPressを使用していましたし、初心者でもWordPressテーマを自作している人がいたので、興味を持ちました。
その頃、私はパッケージソフトの商品企画や、その他のサービスの企画をメインに携わっていたので、自分ではコーディングやプログラミン、デザインはしていませんでした。その中で、WordPressを使ったコーディングに特化して習得すれば、独立しても一人でやっていけるのではないか?と考えたのがきっかけです。
WordPressエンジニアとしての経験をどのように積んでいきましたか?
そのうちに、WordPress案件を主に受注している企業から仕事をもらう機会を得て、WordPressブログ構築ワークショップを開催するなど、少しずつ経験を積んでいきました。
また、実際にEC代行会社に派遣の仕事で就くなど、それ以外のWEB制作の流れについても実践を通して学んでいきました。それが最初の2年間くらいです。
その後は、「SOHOビレッジ」という在宅案件のマッチングサイトで出会ったフリーランスのWEBデザイナーの方からWordPressのコーディング案件の依頼を毎月安定的にいただくようになり、現在は「WordPressエンジニア」という肩書きを名乗っています。
フリーランスになることを決意した理由やきっかけは?
特に辛かったのは、大学3年生のときに、くも膜のう胞が見つかったときです。ちょうど大学4年の始まる時期に手術をしたので、公務員試験も受けられず、就職活動もうまくいきませんでした。
また、周囲からも「イナフクさんは独立向きだよ」という声が多かったので、自然と独立する流れになりました。
独立することに対して不安はありませんでしたか?
ただ、すぐに後悔の日々が始まりました。仕事がないというよりかは、気持ちの落ち込みようが半端ではありませんでした。
正直、WordPressを選んだこと、仕事の内容、やっていた活動は今と変わらず、真面目に必死にやっていればすぐに今と同じ流れになっていたと思います。ただ、実際はうまくいきませんでした。
なんというか、バーンアウト症候群(燃え尽き症候群)のような状態に陥っていました。
どのようにして気持ちを切り替えましたか?
30年もの長い間、難病を抱えながらの生活をしていると、肉体的なことはもちろん、世間の目や扱いなどで精神的につらいこともありました。それゆえに、人とは違った思考や人を疑ったり悲観的な思考になったりする癖がありました。
また、仕事のプレッシャーから急に解放された虚無感などがあり、それから立ち直るのに時間がかかりました。
武術などでストレス発散をし始めてからは、まだまだ完全とは言えませんが、現時点で特に不安はそこまでありません。
在宅フリーランスで苦労していることはありますか?
あと、請求書の発行や帳簿などの地味な作業は苦手です。今後は、こういった部分はアウトソースしていきたいと考えています。
イナフクさんのように在宅で働きたいと思う人も少なくないと思いますが、難病や障がいのある人の就労についてどのように思われますか?
リモートワークについては、プログラミングやデザインの技術を身につければ、最低限食べていけるだけの仕事にもありつける可能性が高まるのでおすすめです。
また、難病のある人の中には普通に働ける人も数多くいます。もし、少しでも今の環境を改善したいと考えているなら、より多くの在宅案件を持って、障害・難病のある人に特化した教育とクラウドソーシング事業をやれば、今よりもずっと就労問題は改善されると思っています。
難病のある人はどんなスキルを身につければ「強み」になると思いますか?
具体的に、どんな「作品」をつくったらよいでしょうか?
もしそれでも迷ったら、とりあえず自分でWEBサイトを作ってみることをおすすめします。
参考書籍を一つ挙げるとすれば、『プロになるためのWebデザイン入門講座 実践で役立つPhotoshop&Illustrator徹底ガイド』はおすすめです。
この本は、WEBサイトを作るまでの流れが解説されています。PhotoshopやIllustratorなどのデザインソフトの使い方、HTML/CSSの使い方を学べて、最終的にはカフェのサイトができあがります。
PhotoshopやIllustratorはAdobeのCCの体験版をインストールします。
Adobeは7日間無料で使えるので、その期間内の完成をめざし、あとは月額契約するなどして、例えば、自分の病気のサイトを作って公開してみてはどうでしょうか。
作成するページは、(1)トップページ(2)自己紹介(3)○○(病気の名前)とは(4)お問い合わせの4つくらいで十分です。お問い合わせフォームはPHPなどを使うのはハードルが高いので、メールアドレスを書いておけばいいでしょう。第一段階はこんな感じでいいと思いますよ。
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プログラミングを勉強したいとなったらどうすればよい?
人それぞれ好みがありますが、プログラミングの基礎を学ぶなら「Progate」や「ドットインストール」などの動画学習サイトを使って、PHPやjQueryを学べばいいと思います。レンタルサーバーは、最初は「ロリポップ!」などで十分です。
在宅エンジニアやフリーランスになりたい人へのアドバイスをお願いします。
プログラミングならプログラミング、デザインならデザイン。
私も含めて難病当事者は健常者と違い無理をしてはいけません。あれもこれもと手を出せるほどの体力がないのであれば、「選択」と「集中」は必須と思います。
そのほか、難病のため在宅ワークをしたいと思っている人に何か伝えたいことはありますか?
例えば、twitterで情報を得ている人であれば、
- 大変、辛いとつぶやいてばかりのアカウントは外す
- フリーとして働いている人をフォローする
- 寛解に成功した人をフォローする
「大変」「辛い」とかだけのグループにいても、経験上マイナス思考になるだけでいいことはありません。
- 寛解に成功した人はどうやって生きてきたのか?
- フリーの人は、どうやって在宅で仕事をしているのか?
それらを研究して自分の生活に適応させる。
私も含めて、やりたいことはたくさんあるけれど、障がいや難病があって、行動に制限のある方々は、一番やるべき目標を定めましょう!そしてリソースを注ぎ込みましょう!それが目的達成の近道ではないでしょうか。
最後に、イナフクさんの今後の野望や夢をお聞かせください。
ただ、難病当事者にロールモデルになりそうな人が見当たらない、そして、いずれ難病当事者は競争社会の中で置いていかれると私が言い始めて10年以上経ちます。そして、それが現実化されつつあるように思えます。
今、いろいろと世の中に対して文句を言っても、もう変わらないだろうなと感じています。そういう意味もあって、「難病のある人が自力で稼げる世の中を作るしかない」と考えています。今後は、その手助けができるといいな、と考えています。
そのためにも「稼ぐ武器」を磨き続けます。
イナフクさんの一日のスケジュール
7:00 | 起床 |
7:30 | 朝食(自炊したものを食べる) |
8:00 | 炊事・洗濯・掃除 |
9:00 | 仕事開始(コーディング作業など) |
12:00 | 昼食 |
13:00~17:00 | 外出(クライアントと打ち合わせ) |
17:00 | 買い物 |
19:00 | 夕飯 (自炊したものを食べる) |
23:00 | 就寝 |
編集よりひとこと
以上、イナフクさんのキャリア・インタビューいかがでしたでしょうか?
プログラミングやデザインなど専門スキルがあれば在宅でも働ける、独立しなくてもリモートワークという手もあるなど、障がいや難病のある人の働き方や具体的にやるべきことなどについて、さまざまな示唆を与えてくださっているのではないでしょうか。これから就職・転職活動をはじめる20代の皆さんほか、難病があっても働く強い意欲のある人、在宅で働きたい人は、ぜひ参考にしてくださいね!
イナフクさんのツイッターはこちら⇒ @Inafuku_Kazuya
興味がある人はぜひフォローして、ご意見・ご感想などお寄せください。
(取材&編集:江口たま)
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