[特別寄稿]「難病のある人が長く働くために」石井京子氏(日本雇用環境整備機構理事長) #難病 #障害

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さて、膠原病の一つ高安動脈炎(大動脈炎症候群)は希少難病ではありますが、日本国内に推定約6000人の患者の方がいます。なかでも10代、20代の女性の割合が多く、就職・結婚・出産などのライフイベントに関する悩みを持つ方々は少なくありません。

そこで、今回は、障がい者雇用のコンサルティング歴14年以上という人材紹介のプロ・石井京子さん(一般社団法人日本雇用環境整備機構理事長)にお願いして、特別に記事をご提供いただきました。以下、転載許可を得て掲載させていただきます。

[特別寄稿]「難病のある人が長く働くために」石井京子氏(日本雇用環境整備機構理事長)

私は長年さまざまな障がいのある方の就職支援に携わっています。また難病患者さんの団体との関わりも深く、さまざまな団体との交流があり、またいくつかの団体の運営にもかかわり活動してきました。

それらの活動からも障がいや難病のある方の日常生活全般について知っています。障がいや難病があっても就労を目指す方々のひとり一人の状況は異なりますが、自分の体調に合わせて働き方を考えること、仕事をしながら成長していくことの基本的な部分では変わりはありません。

それぞれの疾患とは長く付き合っていくしかありません。体調が悪いことにより会社を休む回数が増え、会社を休むことに対して必要以上に不安を感じる方もいます。

慢性疾患を持つ方の中には気持ちが落ち込みやすく、うつ症状を経験する方がいます。もちろん個々の自己肯定感の違いはあると思います。しかし、職場でうまくいっている方と落ち込みやすい方との明らかな差はなんだろうと考えてみると、うまくいっている方は何かトラブルが発生しても対応できるように、ある意味でのリスク管理として事前に準備しているようです。

その対応は特別なことではありませんが、慢性疾患を持つ方は毎月の通院以外に、場合によっては通院治療が必要となることがあります。それは2~3年毎かもしれませんし、5~10年という単位かもしれませんが、入院のため職場を不在にする可能性が周囲の方より高いわけですから体調の悪くないときでも、近い将来お世話になることを考えて周囲の方々と接していると、ある患者さんから聞いたことがあります。

具体的には、

    • 「自分ができることは常に気持ち良く対応する」(自分も入院中にお世話になるのだから)
    • 「仕事は自分ひとりで抱え込まないようにする」(急に入院となった場合、どんな仕事がどのような進捗状況にあるかわからないとその仕事を引き継ぐ方に迷惑をかけることになるので)

などです。普段から信頼関係を築いておくことが大切とのことです。

社会も職場も自分ひとりでは成り立ちません。自分ひとりで闘うのではなく、周囲の方々にも協力してもらいながら長距離ランナーを目指すのがよさそうです。なかには高すぎる目標を目指す方がいますが、目標が高ければ高いほどうまくいかないときの落ち込みが大きくなります。少しだけ力を抜いて自分の可能なところから始めていきましょう。

一人でも多くの理解者が増えること、そして難病のある方が安心して就業できる職場が増えていくことを願っています。

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難病患者(がんなども含む)であっても、治療経過によっては体調も安定し、仕事に復帰されている方も少なくありません。これから就職を考える学生の方なども、社会とのつながりを持つために「働きたい」という方は少なくないと思います。

どのような就業条件や環境があれば自分は働けるのか、実際に仕事をしはじめたら、いかに継続していくことができるか、困ったときの支援者の必要性など、ご自身の状況にあわせて考えていけば、必ず解決の糸口は見つかるはずです。石井さんのおっしゃるとおり、ひとりで悩まず、周囲に相談して理解者を増やしながら、マイペースに“長距離ランナー”として一歩ずつ歩み続けましょう!

石井京子氏のプロフィール
一般社団法人日本雇用環境整備機構理事長。上智大学外国語学部英語学科卒業。通信会社を経て、人材サービス会社で障害のある方の人材紹介事業に従事。数多くの企業へ障害者雇用に関するコンサルティングサービスを提供するほか、障害や難病を持つ方の就労支援に幅広く対応。発達障害のある方の就労に関する執筆や講演活動などにも積極的に取り組む。著書に『発達障害の人の就活ノート』『発達障害の人の転職ノート』など