去る2017年7月1日(土)、東京・新宿にて血管炎関連の市民公開講座(東京女子医科大学血管炎連携会議・東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター主催)が開催されたので参加してきました。
会場は、新宿住友ビル47階にある会議室で、推定60名以上の大勢の方が会場いっぱいに集まっていました。また、当講座の開催にあたっては、全国膠原病友の会東京支部および高安動脈炎の患者会「あけぼの会」も運営協力されていました。
こういったセミナーに参加して毎回思うことですが、参加者の年齢層が私よりもはるかに上の方々ばかりなので、たとえ血管炎であったとしても、寛解状態を維持していけば、私も年を重ねていくことができるのかなぁ、と希望が持てます。
さて、今回参加した市民公開講座は、次のような内容でした。
「難治性血管炎の最新情報」プログラム
- 「開会挨拶」
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿 - 「厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班の活動」
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 特任教授 針谷正祥 - 「ANCA関連血管炎の診断と最新治療」
東京女子医科大学病院 腎臓内科 教授 内田啓子 - 「血管炎の現場を診る」
東京女子医科大学病院 病理診断科 教授 長嶋洋治 - 「皮膚科からみた血管炎」
東京女子医科大学病院 皮膚科 准教授 石黒直子 - 「神経内科からみた血管炎」
東京女子医科大学病院 神経内科 准教授 清水優子
(以上、敬称略)
- 療養相談会
具体的には
まず、はじめにリウマチ痛風センターの山中所長より、開会のあいさつ(約5分)がありました。
針谷先生からのお話
その後、この講座を企画された膠原病リウマチ痛風センターの針谷教授より厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班の活動などについて約10分ほどお話がありました(針谷先生は、2017年度から厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業難治性血管炎に関する調査研究班の研究代表者も務めていらっしゃいます)。
そのなかで、2018年のはじめ頃に高安動脈炎など9つの指定難病を含む血管炎の診療ガイドラインの改訂版が出る見込み(医学書にしてはお安い3800円)である、とのお話がありました。
また、皆さんご存知の生物学的製剤「アクテムラ」が2017年夏(8月25日)に、高安動脈炎と巨細胞性動脈炎に対する効能・効果追加が承認される見通しであるとのことです。◇皮下注162mgオートインジェクター、皮下注162mgシリンジ(一般名:トシリズマブ)
難治性血管炎に関する調査研究班のホームページの紹介もありました。
●難治性血管炎に関する調査研究班のサイトはこちら
http://www.vas-mhlw.org/
各診療科の先生からのお話
続いて、各診療科(腎臓内科、病理診療科、皮膚科、神経内科)の先生から、それぞれ持ち時間20分ほどでお話がありました。
まず、膠原病や血管炎に合併する腎障害を専門とする内田先生からは、ANCA関連血管の多くの症例で腎臓が障害されること、そもそもの腎臓の役割や構造、腎臓がダメージを受けるとどのような症状が現れるのかなどについてお話がありました。また、「ANCA関連血管炎の診療ガイドライン2017」が発刊されていますが、それをベースに治療や予後についてのお話がありました。
続いて、病理医の長嶋先生から、病理医とは?病理診断とは?炎症とは?などのお話がありました。病理医とは、病変部から採取された組織や細胞を顕微鏡で観察して、病気の診断や治療法の決定に寄与しているわけですが、がんほか細胞組織の生検画像をたくさんみられて、病理診断ってこんな風にやっているんだなー、というのがわかって、なかなか興味深かったです。ちなみに、長嶋先生は、長瀬智也さん主演の『フラジャイル』第8話で監修協力をしたり、芦田愛菜ちゃんが「病理医になりたい!」と夢を語ったことで、最近は病理医にスポットがあたり、得意げに語られていました(会場笑)。
続いて、膠原病・血管炎の皮膚科領域を専門とする石黒先生からは、皮膚に症状を起こす血管炎の種類・分類(巨細胞性血管炎、皮膚動脈炎、ANCA関連、免疫複合体性小型血管炎)や、それぞれの皮膚症状の違いなどの症例画像などの解説がありました。
最後に、神経内科の清水先生からは血管炎性ニューロパチーの原因疾患や治療についての解説がありました。
私は参加しませんでしたが、講演会後には療養相談会が行われています。
まとめ・感想
今回の講座に参加して、それぞれの先生からのお話は持ち時間が20分と限られていて概要把握にとどまりましたが、難治性血管炎の全体像や、東京女子医科大学病院での診療連携についてより理解が深まったような気がします。これだけの専門医がチームとなって診てもらっている患者の皆さんは、さぞかし心強いでしょうね。東京女子医大に転院したくなりました(笑)
山中所長もあいさつ冒頭でおっしゃっていましたが、血管炎は現時点では“難治性”ではあるけれども、研究がさらに進んで、血管炎が将来的には「治る病気」になることを切に願うばかりです。
2018年1月14日には、大阪(会場はグランドフロント大阪の予定)で同様の講座が開催されるそうです。
関西圏で、ANCA関連血管炎、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎などの分野に興味のある方は、参加されてみてはいかがでしょうか?